業務の一部を自動化できるツールとして、RPA(ロボットによる業務自動化)をご存知でしょうか。
グローバルビジネス拡大の中、日本企業も規模を問わず生産性向上を求められており、DX・業務改革・働き方改革を推進する上で「RPA」は外せません。
すでに国内の多くの企業でRPA導入が進んでおり、工数削減やミスの削減、売上の向上やモチベーション向上など成果を生み出しています。
一方、RPAはどの様に使えば良いのか?どのように導入すればいいのか? 失敗しないためのポイントは?といった疑問をお持ちの方々が多い様です。
このような疑問にお答えして、本記事ではRPAの説明から、成功事例の紹介、失敗しないためのポイントまでを詳しく解説します。
目次
RPA(ロボットによる業務自動化)とは?
成功事例と失敗しないためのポイントを解説。
RPA(ロボットによる業務自動化)とは
RPAとはRobotic Process Automationの略で、人がパソコンを使っておこなう定型作業をソフトウェアロボットが代替し、正確・高速に処理して自動化する技術です。
RPAが必要とされる背景日本における労働環境の変化
昨今、RPAが必要されている背景には、様々な社会課題があります。
1.少子高齢化による労働力不足
日本は少子高齢化の影響を受けて深刻な人出不足が起きており、生産年齢人口は2065年には2016年と比較して60%程度にまで減少すると言われています。自動化できる業務はRPAを活用し、労働力不足を補う必要があります。特にIT人材が不足していると言われていますが、難しいプログラミング知識がなくともポイントを押さえた正しい知識があればRPAは導入可能であることから、取り組みやすい施策として注目されています。
2.加速するIT化の波とグローバル競争
世界的に加速しているIT化の波により、市場もグローバル化しています。グローバル競争に勝ち抜くためには、限られた資源を最大限に活用し生産性を高めることが重要です。RPAによる自動化を実現し、人でなければ行えないコア業務に多くの時間を割くことで生産性向上が期待できます。
3.働き方改革の実現
政府が掲げる働き方改革の目的の一つに「長時間労働の是正」があります。
RPAによる業務効率化により従業員の残業時間を削減し、従業員の満足度を向上することが期待できます。
RPAロボットにはどんなことができる?
RPAが得意なことは下記のようなことです。
- 単純な繰り返しの業務
- ルール化された業務
- 速さと正確さを求められる業務
例えば・・・
PCで行っているデータやテキストの入力を自動化
別のシステムへ転記、登録
データの集計・加工・比較・照合
などです。
PRA導入のメリット
ここまで読んでいただきRPAに魅力を感じている方も多いのではないかと思いますが、改めてRPAのメリットを挙げてみましょう。
- DX推進の導入ステップとなる
- コスト削減
- 人的ミスの減少
- 従業員満足度の向上
- 生産性の向上
- コア業務へのシフト
- 売上の最大化
- 品質の向上
享受できるメリットのインパクトは非常に大きいと言えるのではないでしょうか。
AIと RPAの組み合わせ(IPA)でさらに高度な自動化も
RPAと混同されることが多いテクノロジーに人工知能と呼ばれるAIがあります。
ふたつは多くの共通点があるものの、大きく異なります。RPAは人間の代わりに定型作業を行うもの、AIは人間に代わって様々な判断が可能です。RPAが「手」であり、AIは「頭」だと言えます。このふたつのテクノロジーはお互いの役割を補完し合う存在であり、これらを連携させることによって、より幅広い領域で業務効率化が可能になります。
RPAを活用した業務効率化の事例
経理部門「経費精算を自動化」
- 人が経費精算書を申請
- RPAが領収書と金額を照合
- 不一致の場合アラート
- 最終承認者へ通知
総務部門「勤怠管理の自動化」
- 毎月の勤怠情報を受領
- RPAがデータに変換・読み込み
- 人事給与システムにログインし、勤怠情報を登録
人事部門「応募者管理の自動化」
- RPAが求人サイトから応募者データをダウンロード
- 採用管理システムに合わせてフォーマット変更
- 決まった時間に応募者情報のファイルを印刷
営業部門「顧客情報管理の自動化」
- メールやホームページからの問合せをリスト登録
- 重要度の高い問合せを担当者へ通知
- アクション先をタスク化
- 報告書を自動作成
購買部門「在庫管理の自動化」
- RPAが在庫管理管理システムの情報を取得
- 在庫数や出荷予定日を自動で担当者へメール送信
- 発注書を自動作成、仕入先へ送信
品質管理部門「品質管理の自動化」
- 人が対象の品質情報をデータとしてシステムに入力
- RPAが管理すべき対象データとシステム内のデータを照合
- 品質基準をクリアしていないデータをピックアップ
- 不適合データを報告書としてまとめ担当部者にメールで送付
企業の資源情報を一元化ーERP(Enterprise Resources Planning)
ちなみに企業の各部門システムを統合・連携し、相互に参照できるソフトウェアもあります。代表的なもので言うとERP(Enterprise Resources Planning)と呼ばれる、企業の資源情報を一元化し、計画的に管理するためのソフトウェアがあります。
ERPは会計、人事、生産、在庫、販売、物流など企業活動の基幹をなす業務を総合的な視点で効率よく資源を管理することで、企業経営を最適化するものです。これにより経営分析や経営戦略の構築、経営の見える化が可能になり、経営上の意思決定を迅速に行えることがERPの最大のメリットです。
RPA導入で失敗しないためのポイント
これまでRPAの導入のメリットや事例について紹介してきましたが、実際に導入するにあたっては様々な準備が必要です。そのため、導入を進める上で課題が多いのも事実です。
ここではRPA導入に際してチェックすべきポイントをご紹介します。
業務プロセスの可視化・・・現行業務フローの整理 (As Isの作成)
As Isとは「現状」を意味する言葉です。
現状の業務プロセスを可視化し、現状を把握することは問題解決に必須です。
また、可視化によって以下のようなメリットがあります。
- やらなくても問題のない手順を発見できる
- 新しい視点で手順を見直すことができる
- 手順を明確にすることによりRPA開発の効率が上がる
- プロジェクトチームで可視化された情報を共有することにより、円滑に進む
業務プロセスを可視化するために、業務フロー図の作成をしましょう。
RPAのマニュアルを作成・・・刷新後の業務フローの整理(To Beの作成)
To Beとは「あるべき姿」を意味する言葉です。
必要な業務・作業のみをロボットに覚えさせる意味でもマニュアル作成は必須です。
また、マニュアルを作成することによって以下のようなメリットがあります。
- RPA導入前に最適化できる
- 属人化を防げる
- 改善点があった場合など運用管理がラク
要求定義書(要件定義の前段階)の作成
ロボットに期待通りの働きをしてもらうためには設計書が必要です。
ですが設計書にミスがあると予期せぬ時間に停止したり、意図しない動きをしてしまったりするリスクがあります。RPAの設計書は「要件定義書」と呼ばれ、ロボットにどのような動きをさせるのかを定めたものになります。
RPAにおいて要件定義が重要であることはもちろんのこと、さらに重要なのは要件定義の前段階、「要求定義書」の作成です。
要件定義と要求定義、言葉は似ていますが全く違う役割を持っています。
要件定義書は前述のとおりですが、要求定義書は非技術者、つまり企業のRPA導入担当者が作成します。
要求定義書とは「●●がしたい」「●●●になること」など、RPAを導入するユーザー企業側が実現したい機能を明確にしたものになります。よって、要求定義書に漏れがあるとその機能は実現しませんし、曖昧な表現があれば求めていたものと違う仕様になってしまう可能性もあります。
RPAに限らずシステム導入において最重要といえる要求定義ですが、ここで躓いてしまうプロジェクトは大変多いです。その理由はユーザー企業側とシステム開発技術者のIT知識に隔たりがあるため、システム開発技術者が主導となることが多く、要求定義と要件定義が曖昧になってしまうからです。しかも要求定義のミスが発覚するのは納品時というケースも珍しくありません。
その場合、修正する箇所は多岐に及び、修正費用は莫大になり、納期も遅れてしまいます。要件定義書に明記されていないことによる修正コストはユーザー企業側が負担することになります。期待通りの機能を実現するためにはユーザー企業が要求定義書を作成し、ユーザー企業が主導となって、プロジェクトをコントロールしていくことが重要です。
ITコンサルタントに依頼する
前項で要求定義書作成の重要性について述べましたが、そもそも要求定義書の作成はどのように行うのかといった疑問があると思います。また、自力で導入できる自信がない…そのように感じている方も多いでしょう。
そういった場合はITコンサルタントに導入サポートを依頼するのも一つの方法です。
ITコンサルタントは下記のようなサポートが可能です。
【サポート例】
- 要求定義書の作成代行
- RPA化すべき作業の洗い出しから実現したいあるべき姿の構築(As Is To Be)
- 業務フローの作成代行、作成の指導
- システム開発会社の選定
- プロジェクトマネジメント支援、代行
- システム受け入れ基準の策定
- 社員のIT教育
ITコンサルタントがプロジェクトをサポートするメリットとしては、より短期間で費用対効果の高いRPAの導入が可能になることです。
また、ITコンサルタントの中には企業の予算に合わせて柔軟なサポートをしてくれるところもあります。
プロジェクト全体をサポートすることはもちろん、例えば要求定義書の作成のみ、業務フローの作成のみといったスポットの支援も可能ですし、要求定義からシステム開発会社の選定、要件定義書の作成までといった上流工程のみのサポートも可能です。
IT化が加速する時代です。競合他社から抜き出るため、スピーディーに一歩を踏み出すためにもITの専門家からサポートを受けることを検討されてはいかがでしょうか。
RPA導入コンサルタント 株式会社QualityCube
製造業で10年ほど品質管理、品質保証を経験したのち、IT業界にキャリアチェンジ。
業務IT化や、IT人材育成についてなど、IT業界以外の方にもわかりやすい記事を書くことを心掛けています。