データサイエンティストに必要なスキルとは？IPAが発表したDX推進スキル標準を解説

現代社会において、ビッグデータやAI技術の活用が求められる機会が増え、データサイエンティストという専門職が注目されています。
DXを推進したい企業においても、データサイエンティストが必要な人材であることは、なんとなくイメージできるかと思います。
しかし、データサイエンティストにどのようなスキルが必要かご存知でしょうか。
今回は、IPA(情報処理機構)が発表したDX推進スキル標準に基づき、データサイエンティストに必要なスキルについて解説いたします。
また、最後にはデータサイエンティストに必要なスキルを身に着ける方法をご紹介します。

DX推進スキル標準の概要はこちら→
前回記事：DX推進における「サービスデザイン」の重要性とその役割、必要なスキルについて解説→

データサイエンティストの概要

データサイエンティストとは何か

まず初めにデータサイエンティストとは何かについて解説いたします。
データサイエンティストとは、ビッグデータを扱い、その中から有用な情報を抽出し、ビジネス上の意思決定を支援することを専門とするデータ分析家のことです。
データサイエンティストの役割は、ビジネス上の問題をデータとして捉え、解決策を見出すことにあります。
そのため、データサイエンティストは、データを収集・処理して解析し、将来を予測することが必要です。
データサイエンティストが使用するデータの種類は多岐にわたり、ビッグデータだけでなく、センサーデータやWebログなど、多様な情報源からデータを収集します。
そして、そのデータから傾向を読み取って将来を予測し、ビジネス上の意思決定を支援することが求められます。

データサイエンスの分野が注目を集める背景

データサイエンスは、ビッグデータの時代において重要性が増している分野であり、企業のビジネス戦略に欠かせない存在となっています。
データサイエンスの分野が注目を集める背景には、膨大なデータを収集・解析する技術やツールが発展したことがあります。
また、クラウド技術の普及により、ビッグデータの格納や処理がより容易になったことも大きな要因の一つです。
これらの背景から、データサイエンティストはますます需要が高まっています。

DX推進スキル標準におけるデータサイエンティストとは

DX推進スキル標準とは

DX推進スキル標準は、DXの推進に必要なスキルを経済産業省とIPA(情報技術処理機構)が整理したもので、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5つの分野に分かれています。
DX推進スキル標準には、データサイエンティストが必要とするデータ解析や機械学習などのスキル要素が明確に定義されており、企業にとっては採用やスキル評価の指標となります。

データサイエンティストの定義

DX推進スキル標準においてデータサイエンティストは下記のように定義されています。
「DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材」
現在、企業や組織内で発生するデータの量は増大しており、その整備や効果的な活用は、競争力を高める上で重要な課題となっています。
データ活用が中心となるDXの推進において、「データサイエンティスト」は中核となる人材です。

データサイエンティストの役割

①自社や自組織の競争力向上につながるデータ活用を実現する

データの活用や分析は高い専門性を必要とすることが多いため、データサイエンティストにはそのスキルが求められますが、彼らの重要な役割は単にデータ分析に留まらず、自社や自組織の競争力向上につなげることが必須です。
また、データサイエンティストが携わるのは、社外の顧客に向けた製品・サービスだけでなく、社内のユーザーに対して提供するサービスも含まれます。
社内向けの業務を行う場合でも、自身の業務成果が自社や自組織の顧客に対して価値を提供しているかどうか、顧客価値の拡大に十分に貢献しているかどうかを常に意識することが重要です。

②DXにおけるデータ活用領域を担い、必要に応じて、他の人材類型と柔軟に連携する

データサイエンティストは、DXにおけるデータ活用領域を担いますが、必要に応じて他の人材類型と柔軟に連携することが求められます。
データ活用が主な目的であれば、データサイエンティストだけでDXを進めることが可能ですが、DXの取組みがデータ活用以外の領域も含むものより広範であった場合は、他の人材類型と連携しながら、DXの取組み全体の中で効果的な役割を果たすことが求められます。
また、データサイエンティストは、データ活用に関する顧客やユーザー、連携する他の人材類型の要望やニーズを十分に理解するとともに、ときには、それらの関係者にまだ十分に認識されていないような潜在的なニーズから、新たなビジネス創出の機会や業務改革の可能性を発見することも求められます。

データサイエンティストのロール(担う責任・主な業務・スキル)

DX推進スキル標準における「データサイエンティスト」という人材類型を、業務の違いによって区分したものが「ロール」であり、各区分で担う責任、主な業務、スキルが明確に記載されています。

データサイエンティストの業務は下表のように区分されています。

１	事業戦略に基づくデータ活用戦略を立案し、他のロールのマネジメントや他の人材類型との連携を推進する	データビジネスストラジデスト
2	データサイエンス領域の専門性に基づき、 データの処理・解析や、その結果の評価等を担う	データサイエンスプロフェッショナル
3	効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を担う	データエンジニア

「データサイエンティスト」としてスキルアップするには、3つの分野の中から得意な分野を選び、その分野の専門性を高めることから始めるとよいでしょう。
しかし、より広範囲なキャリアアップを目指す場合は、得意分野を中心に複数の分野にわたるスキルを身につけることが望まれます。

データビジネスストラジスト

データビジネスストラテジストとは、企業の事業戦略に基づいてデータを活用する戦略を立案し、プロジェクトのマネジメントを行う役割を担います。
また、現場部門と一緒にデータを活用する業務の設計や見直しを行います。
つまり、DXを推進する他の人材類型や自社内の現場部門等と「データサイエンティスト」を結びつける役割を担うと言えます。
この役割を担うためには、ビジネスやマネジメントに関するスキルが必要であり、法制度やプライバシー保護などに関する高い知識と実践力も求められます。

データサイエンスプロフェッショナル

データサイエンスプロフェッショナルは、データの処理・解析を行い、その結果を評価し、新規事業の創出や現場業務の変革・改善につながる知見を生み出す役割を担っています。
また、現場部門でのデータ活用の仕組みづくりやエンドユーザーに対する教育・サポートも行い、データの処理・解析だけではなく、その結果の活用の場面においても一定の責任を負っているといえます。
このような役割を担うためには、データの分析やその結果の評価に関するスキルのほか、現場のユーザー等を含む多様な関係者と適切にコミュニケーションを行うための平均的なパーソナルスキルなども求められます。
また、先端技術の動向を把握し、自社で活用できる技術を検証する役割も担うため、「その他先端技術」についても、他のロールよりも深い理解が求められます。

データエンジニア

「データエンジニア」は、データ活用基盤として、リアルタイム、動的（dynamic）、自動（automatic）に最適化されるようなデータ分析環境を設計・実装・運用する役割を担います。
このような役割を担うため、「バックエンドシステム開発」や「クラウドインフラ活用」に関しても、ソフトウェアエンジニアと同等の高い実践力が求められます。

まとめ

現在社会において注目の職業「データサイエンティスト」について、その概要とDX推進の取組みにおいて担う責任、役割、必要なスキルについて解説いたしました。
日本企業において、DX（デジタルトランスフォーメーション）の重要性が高まる中、データサイエンティストはますます注目されるようになってきています。
IPAが発表したDX推進スキル標準には、データサイエンティストに求められるスキルが詳細にまとめられており、日本企業においてはこのスキル標準を基にした採用や育成が進んでいます。

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