目次
はじめに
近年、ビジネスのデジタル化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。
自社のDXについて話し合うことが増えた方も多いでしょう。
DXを推進するためにはDXを推進できる人材が必要です。
経済産業省とIPA(情報処理推進機構)がDX推進人材を定義した「DX推進スキル標準」によると、DXに必要な5つのスキル人材のひとつにソフトウェアエンジニアが挙げられています。
しかし、単にプログラミング言語やフレームワーク、データベースに詳しいだけでは、DX推進には貢献できません。
DX推進に必要なスキルを持つことが求められます。
本記事では、ソフトウェアエンジニアに求められるDX推進スキルについて紹介します。
DX推進スキルの見える化によって日本企業のDXが加速する?経産省(IPA)公表の「DX推進スキル標準」とは何か?
前回記事→データサイエンティストに必要なスキルとは?IPAが発表したDX推進スキル標準を解説
ソフトウェアエンジニアとは
まずは、ソフトウェアエンジニアとDX推進スキル標準について解説していきます。
ソフトウェアエンジニアとは、コンピューターソフトウェアを設計・開発・保守する専門家のことです。
主にプログラミング言語やフレームワーク、データベースに詳しく、コンピューターシステムの構築や改善を行います。
ソフトウェアエンジニアの仕事は、コンピューターシステムがスムーズに動作するようにすることです。
また、ユーザーにとって使いやすいUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を考慮したソフトウェア開発も行います。
DX推進スキル標準とは
DX推進スキル標準とは、DXを推進するために必要なスキルを経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が定義した基準です。
DX推進スキル標準には、ビジネス目標や技術目標に対して、どのようなスキルが必要なのかが示されています。
ソフトウェアエンジニアがDX推進に貢献するためには、DX推進スキル標準に従い自身のスキルを評価し、必要なスキルを身につけることが求められます。
次の章では、DX推進スキル標準においてソフトウェアエンジニアが期待される役割について、詳しく解説していきます。
DX推進スキル標準におけるソフトウェアエンジニアとは
DX推進スキル標準におけるソフトウェアエンジニアに求められる役割
DX推進スキル標準において「ソフトウェアエンジニア」に具体的に期待される役割や求められるアクションは以下のとおりです。
①高い技術力を通じて自社や自組織の競争力向上に貢献する
ソフトウェアエンジニアには、高度な技術力が求められ、その技術力を通じてDXの推進や自社の競争力向上に貢献することが期待されます。
「DX推進スキル標準」の対象は社外向け製品・サービスの開発に携わるエンジニアだけでなく、社内のユーザーにサービスを提供するエンジニアも含まれます。
どちらの場合も、最終的には自社の顧客やユーザーに対して価値を提供することが重要であり、自社の顧客価値の拡大に貢献することが求められます。
② 変化の激しい状況の中でも、他のステークホルダーと柔軟に連携し、価値を生み出す
ソフトウェアエンジニアには、顧客やユーザー、DXの取組みにおいて連携する他の人材類型等、関係者の要望やニーズを十分に理解した上で、その期待に沿った、またはそれを上回る水準のシステムやソフトウェアを実現することが期待されます。
特にDXの取り組みにおいては、新たな価値を見出し創造することが重要であるため、顧客やユーザーのニーズを自ら発掘・理解する姿勢も必要です。
さらに、システムやソフトウェアを創り上げる過程において、急激な環境や状況の変化も起こり得ます。
顧客やユーザー、関係者のニーズが変わった場合などに素早く適応するためには、技術力・柔軟性・対応力が必要です。
③自らの手で競争力のあるソフトウェアを創り出せる水準の高い技術力を維持・獲得する
「ソフトウェアエンジニア」の最大の強みは、他の人材や企業の支援なしで、競争力のあるソフトウェアを迅速に創り出せることです。
しかしながらこの強みを維持するためには、継続的なスキルアップが必要です。
④他人類型と連携してDXを進める
ソフトウェアエンジニアは他の人材類型の要望やニーズを十分に理解し、柔軟かつ効果的に連携することが求められます。
どちらかがどちらかに指示をする、または依頼するといった形ではなく、協働関係を構築しながらDXを進める必要があります。
DX推進スキル標準において、ソフトウェアエンジニアに求められるロール(担う責任・主な業務・スキル)
DX推進スキル標準では、ソフトウェアエンジニアの業務を分類しています。
それぞれの分類において、担う役割や責任、求められるスキルが定められており、これがロールとなります。
ソフトウェアエンジニアの業務は、下表のように区分されています。
フロントエンドエンジニア | ソフトウェアやアプリケーションについて、ユーザーから見たインターフェース側の機能の開発を担う |
バックエンドエンジニア | ソフトウェアやアプリケーションのサーバー側の機能の開発を担う |
クラウドエンジニア/ SRE(Service Reliability Engineering) |
クラウドを活用したソフトウェアの開発・運用環境の最適化を担う |
フィジカルコンピューティング | 物理空間のデジタル化を担う |
次の章でロールごとに必要なDX推進スキルを詳しく見ていきます。
ソフトウェアエンジニアが持つべきDX推進スキル
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、ソフトウェアやアプリケーションのユーザーインターフェース側の機能開発を担当します。
そのため、ソフトウェア開発に関するスキルだけでなく、「デザイン」や「プロダクトマネジメント」に関する知識も必要です。
さらに、プロジェクトマネジメントやセキュリティ技術に関するスキルも求められます。
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアは、ソフトウェアやアプリケーションのサーバー側の機能の開発を担当します。
そのため、「バックエンドシステム開発」や「クラウドインフラ活用」をはじめとする「ソフトウェア開発」に関するスキルが求められます。
また、「データエンジニアリング」に関するスキルに加えて、「プロジェクトマネジメント」や「セキュリティ技術」に関するスキルも必要です。
クラウドエンジニア/SRE(Service Reliability Engineering)
クラウドエンジニア/SREは、クラウドを活用したソフトウェアの開発・運用環境の最適化を担当します。
そのため、「クラウドインフラ活用」や「SREプロセス」などを中心とした「ソフトウェア開発」に関するスキルが求められます。
さらに、「データエンジニアリング」に関するスキルのほか、 「プロジェクトマネジメント」や「セキュリティ技術」に関するスキル(特に「セキュリティ運用・保守・監視」) も必要です。
フィジカルコンピューティングエンジニア
「フィジカルコンピューティングエンジニア」は、物理空間のデジタル化を担当します。
そのため、通信・ネットワークや関連する先端技術など、「フィジカルコンピューティング」に関するスキルが必要です。
さらに「システムズエンジニアリング」に関するスキルのほか、「セキュリティ技術」に関するスキルも必要です。
ソフトウェアエンジニアがDX推進に貢献する方法
ビジネス目標と技術目標を一致させる
DXを推進するためには、ビジネス目標と技術目標を一致させることが重要です。
ビジネス目標とは、企業が達成したいと考えている目標であり、利益の増加や市場シェアの拡大などが含まれます。
技術目標とは、技術的な課題や目標であり、セキュリティ強化やデータの活用などが含まれます。
ソフトウェアエンジニアは、ビジネス目標を理解し、それに応じた技術的な解決策を提供することが求められます。
例えば、ビジネス目標がセキュリティ強化であれば、ソフトウェアエンジニアはセキュリティに配慮したアプリケーションを開発する必要があります。
ビジネス目標と技術目標を一致させることで、ビジネスプロセスの最適化や効率化が実現され、DX推進につながります。
アジャイル開発の導入
DX推進において、ソフトウェアエンジニアが採用すべき開発手法の1つがアジャイル開発です。
アジャイル開発は、従来のウォーターフォールモデルに代わって、現代のソフトウェア開発において非常に重要な手法として認知されています。
アジャイル開発では、短い期間でリリース可能な小さな機能を開発し、ユーザーのフィードバックを取り入れて改善を行うサイクルを繰り返します。
ソフトウェアエンジニアがアジャイル開発を導入することで、ビジネスニーズに対応した迅速かつ柔軟な開発が可能となります。
コミュニケーション能力の向上
ソフトウェアエンジニアは、開発チーム内だけでなく、上級管理職やユーザーとのコミュニケーション能力を向上させることが必要です。
これは、アジャイル開発においては特に重要であり、チーム内のコミュニケーションが円滑であることが開発の進行に直結するためです。
コミュニケーション能力を向上させるためには、実践を通じて磨くことが必要です。
自分の意見を積極的に表現し、他人の意見に対しても敬意を持ち、真摯に向き合うことが大切です。
また、積極的に情報共有を行い、コミュニケーションを促進することも有効です。
DX推進スキルを身につける方法
自己学習の方法
まず自己学習の方法としては、オンライン学習プラットフォームの活用、書籍の活用、ブログやSNSの情報収集などがあります。
加えて、研修やトレーニングの活用も重要です。
以下に、研修・トレーニングの活用について紹介します
研修・トレーニングの活用
社内研修・トレーニング | 社内研修やトレーニングは、自社の業務に合わせたスキルを身につけることができます。 また、社員同士が交流を深め、チームビルディングにも繋がります。 |
外部研修・トレーニング | 外部研修やトレーニングは、他社の事例やトレンドを学ぶことができます。 業界の最新技術や手法を知ることで、自社の開発プロセスの改善に役立てることができます。 |
コミュニティ活動への参加 | 技術コミュニティのイベントや勉強会に参加することで、他社の事例や最新技術に触れることができます。 また、コミュニティ内での交流も深めることができ、自己学習やチームビルディングにも繋がります。 |
オンライン研修・トレーニング | オンライン研修やトレーニングは、時間や場所にとらわれずに受講することができます。 また、自分のペースで学習することができるため、自己学習にも繋がります。 |
以上のように、自己学習と研修・トレーニングを組み合わせることで、DX推進に必要なスキルを身につけることができます。
自分の目的や状況に合わせて、最適な方法を選びましょう。
ソフトウェアエンジニアに求められるDX推進スキルの重要性
ソフトウェアエンジニアがDX推進スキルを持つことは、企業のビジネス成果に大きな影響を与える重要な要素です。
今後ますますDXが進展する中で、ソフトウェアエンジニアは自己啓発やスキルアップを進め、より高いDX推進スキルを身につけることが必要不可欠となっています。
DX推進スキルを身につけて、今後のキャリアアップにつなげよう
DX推進スキルを身につけるためには、自己学習や研修・トレーニングの活用が有効です。
そして、DX推進スキルを身につけることで、今後のキャリアアップにつなげることができます。
DX推進スキル標準には、ソフトウェアエンジニアに求められるスキルが詳細にまとめられており、日本企業においてはこのスキル標準を基にした採用や育成が進んでいます。
IT人材育成研修サービスを提供するQualityRoomではDX推進スキル標準に準拠した、ソフトウェアエンジニア育成教育サービスを提供しております。
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製造業で10年ほど品質管理、品質保証を経験したのち、IT業界にキャリアチェンジ。
業務IT化や、IT人材育成についてなど、IT業界以外の方にもわかりやすい記事を書くことを心掛けています。